マメ四駆が切り拓いた道

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始まりは運命のいたずら 初代

• 初代 (1970年〜1981年) 1972年7月21日金曜日。夜8時から数秒すぎたあたり。ジムニーはブラウン管にデカデカと登場する。
  色はクリーム色。幌はなくフロントウインドウも倒されて全開。ジムニーの持ち主は信号待ちでかたわらのライダーに話しかける。「すいません、ライター貸してください、ライター」。
  おもむろにタバコに火をつけた彼は信号が変わるとそのまま走り去ってしまう。追うライダー……。
  この印象的なシーンの主人公はショーケン。ドラマの名は他ならぬ『太陽にほえろ!』である。トヨタが車両提供をするまで、ジムニーは捜査車両として様々なシーンを駆け巡るのであった。固定観念にとらわれない新しい刑事ドラマの重要な相棒として、当時はとても新しく映ったに違いない。

時代が追いつき始めた 2代目

• 2代目(1981年〜1998年) ジムニーにとって2代目はいちばん変化に富んだ時代だったかもしれない。
  ポロンポロンと牧歌的なサウンドとともに白煙を巻き上げて走る2サイクルエンジンから、現代的な4サイクルのターボエンジンへの換装。550ccから660ccへの軽規格変更に伴うサイズアップ。ジムニー1000を皮切りにジムニー1300、ジムニーシエラへと続く白ナンバージムニーの拡充。そしてまさかのライバル 三菱 パジェロ・ミニの登場など、周囲の環境が目まぐるしく変わっていった。
  ジムニーの思想と価値に時代がやっと気がつき始めたころ、という見方もできる。それほど「クロカン4WD」が一般化し始めていたのだ。

そして不動の価値を得る 3代目

• 3代目(1998年〜2018年) 軽自動車規格変更がきっかけのモデルチェンジだったとはいえ、開発陣も20年に亘って続投するとは思ってもみなかっただろう。
  ゼロ年代の早い段階からいくつかのモーターショーでジムニー後継を匂わせるコンセプトを世に問い、市場の雰囲気を伺っていたようだが、どれもフェードアウトしていった。
  こうした経緯から次世代を投入する難しさと勇気の必要性をひしひしと感じたものである。
  長いモデルライフ中、2WDの「ジムニーL」の投入や山本寛斎とのコラボモデルなどに驚きはしたものの、基本を崩すことなく4代目登場以降も良い道具として現役でいられるはず。特別仕様車「ランドベンチャー」の乗り味が極めて良かったことが印象的だ。

リビングとガレージで愉しむジムニー

• ミニカー こ……これはジムニーなのか？ と考え込んでしまうほどラフな造形の、国籍・メーカーともに不明の商品がイイ味を出している。フォルムやライトがかろうじて「ジムニーしてる」感じが微笑ましい。世界中でモデル化されるほどジムニーが広く認知され、ポピュラーな存在であるということだろう。
• プラモデル 月刊コロコロコミックで小学生が熱狂するレーサーミニ四駆シリーズ以前の、きわめてほのぼのとしたオフロードタイプのミニ四駆が多く出品されている。近所の工事現場に持ち込み、瓦礫の上に置くとたいそう絵になったことを思い出す。今ならすぐにInstagramに投稿するだろう。いっぽうでハセガワから発売されているものはメッキパーツやサスペンションの再現性が高く、これまた写真映えしそうな仕上がりが期待できる。
• アクセサリ 他のクルマの場合、総じてキーホルダーやステッカーなど軽めの商品がリストに出てくる傾向があるのだけれど、ジムニーの場合はそれらに加えてルーフキャリアやスペアタイヤカバーなど本気度が高い実車装着向けのアクセサリーが多いのが特徴。それはそれで見応えがあってとてもいい。
• パーツ やはり無視できないのはジムニーのため無数に用意されたパーツの数々だ。怒涛の商品数に気持ちが上がる。ヤフオク!に出品されているパーツのリストだけでジムニー1台が出来上がってしまいそうな勢いすら感じる。SJ10型(1976年〜)の純正テールランプが普通に売っていたりして驚愕だ。ジムニーだけの蚤の市に潜り込んだ気分に浸れる。
• ノベルティ ディーラーを訪ねたり、成約した時にだけしかお目にかかれないノベルティはファンならば誰でも憧れるもの。今なら、なかなか手に入らなかった商品を手に入れることができるかも。グッズのラインナップとデザインから当時の流行や時代背景が見えてくるのもおもしろい。数が少なく二度と作られることがないだけに一期一会を逃さずすぐに落札がベスト。
• 非売品 ノベルティよりも「狭き門」それが非売品。もともと販売していないのだから手に入れようがない。ディーラーで使用されていた販促ツールやPOPの類、カラーサンプルなど。当時の関係者しか手に入らなかったモノでも、ヤフオク!ならば買えるのはうれしい。マニア度のレベルが上がること必至。
• カタログ クルマ好きならば誰もが通る道、それが「カタログ集め」の筋。PR用の薄いモノから購入検討者用の「本カタログ」までバリエーションが意外と多い。しかしジムニーはバイクを併売しているような小さな販売店で売られていたパターンが多いため、残存部数が少なく過去のカタログは入手が難しいと思われる。
• ビデオ・DVD 半世紀に及ぶ歴史を持つジムニーが昨今の各種SNSやYouTubeと非常に親和性が高く、ひときわ輝いているように見えるのがおもしろい。雪道で立ち往生している大型トレーラーを救出したり、考えられないような断崖を登る様子が探せば探すほど見つかるのだ。ビデオ・DVDの数が少ないことと反比例している現象はこのクルマならではかもしれない。伝統が流行を越えた？
• 雑誌・本 当時の開発秘話や生産型に至るまでのデザインプロセスをじっくり確認できたり、カスタマイズの方法や整備のキモがキチンと書いてあるのが活字の良さ。ジムニーの使われ方を反映し、メンテナンスのノウハウやカスタマイズ方法を集積した書籍のなんと多いことか。愛され度の高さがうかがい知れる。